2009-01-01から1年間の記事一覧

Tue, Nov 10

21:10 禿頭をこすってジンを出す。望みは何か。禿を治せ。うむむそれでは帰る場所がなくなるのだが。と言いつつジンは隣で寝ている男の髪の毛をがしとむしっては私の頭に植え付ける。では、とジンは生まれたばかりの禿頭に消える。すべりが悪そうなので、私…

Mon, Nov 09

20:50 たとへば、文中にポプラ竝木と書いた時、それは本當にポプラでよいのか、銀杏ではどうか、と吟味したことが滲み出てゐるやうな、そんな文章を讀みたいと切に願つてゐるのです。 大形燐太?『まだ見ぬ新しい小説家たちへ』 about 4 hours ago from #twno…

Sun, Nov 08

20:30 あの時臺所で指を切らなければ、その指を私が舐めなければ、貴女はこのやうな目に遭はずに濟んだのかもしれません。今、兩の指はきれいに切り揃へられ、滴り落ちる血を十個のワイングラスが受け止めてゐる。後悔はないはずです。あの時「舐めて」と言…

Sat, Nov 07

20:55 白い紙の上に鉛筆で一本直線を引く。その端にダンゴムシを放すと線に沿ってまっすぐ歩き始める。ここまでで一年。その途中に△印を書き込むと止まり、Gと書くと再び歩き出す。これでさらに三年。加えて×と書くと自死するよう躾けてあるものの、まだこ…

Fri, Nov 06

19:00 彼らが生殖能力を有するようになるのは人でいうと初老を過ぎてから。それから死ぬまでに一度だけ子孫を残す機会が与えられる。その一度で子を得られた幸運な夫婦には、共同体から子に持たせるための包丁一揃いが贈られる。親はその体を子に与えるため…

Thu, Nov 05

20:00 このディスクにはあなたが生まれてから今までの記憶が入力されています。これをここに挿入すれば、この物体は今後あなたとなってその生涯を全うします。しかし状況によっては記憶の繋ぎ目を補完する必要が生じます。あなたの仕事はその補完です。これ…

Wed, Nov 04

22:00 私は受話器を置き、文字を書き付けた紙片を傍らの翻訳家に手渡す。翻訳家はそれを飲み込み、然るべき形に翻訳して私のほうへ差し出す。私はそれを見てひとつ頷き、翻訳家の首輪を外す。仕事を終えた満足感と戸惑いの混じる目の色で私を一瞥すると、最…

Tue, Nov 03

22:30 サイレンが鳴り響き、街ゆく人がみな私を注視する。私はぐるりと周りを見渡し、ひとつ大きく深呼吸をして、詩の朗読を始める。人々の不安げな表情と、高らかに響く声の不均衡を楽しみつつ、朗読も半ばを過ぎた頃、一人の男が突然激しく笑い始める。さ…

Sun, Nov 01

22:00 目の前に積まれている原稿用紙の升目が埋められることはもうない。私の頭の中ですでに完成しているこの作品は、もはや人の目に触れることはなく、数え切れないほどの升目と床に転がるいくつもの酒瓶に、私はもうすぐ殺される。微かに喇叭の音が聞こえ…

Sat, Oct 31

19:00 その山羊は一時間に一回めぇと鳴くので村人は時報代わりに使う。山羊が眠っている間は人々も眠る。目を覚ましてめぇと鳴くまで村の一日は始まらない。昼だろうと夜だろうと鳴き声を聞くまで寝ているし、声が聞こえなくなるまで起きている。めぇめぇと…

Fri, Oct 30

21:09 臍のゴマと耳垢と目ヤニと鼻糞と爪垢は互いに反目しあっていた。黒いからどうだ黄色いからどうだとその色や容貌を罵りあっていた、しかし彼らの増殖とともに宿主は徐々に弱り始め、絶滅の可能性もあるため、宿主保存の策を練るべく、今ようやく会議の…

Thu, Oct 29

20:00 彼の放った矢が、2.44m先の的めがけて落ちてゆく。初速5m/sで描かれる緩やかな放物線。私が今、どのように祈ろうともこの放物線は狂うはずもなく、彼が満足げにビールを飲むしぐさまで、すでに誰かに決められていたかのようだ。私が今夜、彼の腕で眠り…

Wed, Oct 28

21:00 龍はその死を目前に、一人の男に命じ少女の背に自分の姿を彫らせた。見た者はみなそれを欲し、男は不眠不休で彫り続けた。やがてその国の民は全て背に龍を持つに至り、持たないのは男一人となった。男は絶命寸前の龍の前で跪き、その鱗に自分の姿を彫…

Tue, Oct 27

20:53 あなたの鼻の穴を綿球で塞ぐ。耳の穴を綿棒で塞ぐ。肛門は麺棒で塞ぐ。尿道は爪楊枝で塞ぐ。涙腺はマチ針で塞ぐ。そして最後にその口をあたしの唇で塞ぐ。あたしの吐息が漏れないように、あなたの中から外へ通じる穴という穴を塞ぐ。毛穴も汗腺も塞ぎ…

Mon, Oct 26

23:29 君はぼくのブロックノイズの中にいて、ぼくは君のブロックノイズの中にいる。ノイズから不要なものが取り除かれ君の姿を作り出す。こうしてぼくは一日に一度、君に逢える。周りを取り囲む無数のワームたちが、不要なノイズを食い尽くし、時間がきたら…

Sun, Oct 25

23:00 ゴミ出しのときにいつも会う奥さんの代わりにご主人が見えたのでどうかしたのかと尋ねると、ええちょっと体調が、という。それはお大事にと返す代わりに、透けないビニル袋持って来ましょうかと言うと、ご主人にへらと薄笑い。手に提げたビニル袋に透…

Sat, Oct 24

19:00 このプールに飛び込む度、何かをひとつだけ持っていかれる。最初はキャップ、次はゴーグル、やがて水着に手をかけられ、鼻に指を突っ込まれ、髪の毛を引きずられ、眼球をえぐられそうになる。それでも私は飛び込み続ける。この痛みこそが、彼の、永遠…

Fri, Oct 23

17:00 ずっと絵ばかり描いておりました。描いたのはもうひとつのセカイでした。そこに描いた婦人に恋をして、いつかあちらに行きたいと願いました。願い叶って来てみると、私が描いた、そのままの光景にただ驚くばかり。婦人への思いも無事相通じた今、再び…

Thu, Oct 22

22:57 机の上のキャップに違う色のペンを差す。すると恍惚の表情をするので、ペン立ての中のペンの上と下を入れ替えてみる。反目するもの、吐き気を催すもの、恥ずかしがるもの、いきなり交わるもの、反応は様々である。ノック式だけは、その様子を見ながら…

Wed, Oct 21

21:00 アバターを設定しろというのでまず輪郭を選ぶ。レスポールを。次は髪の毛。蚯蚓千匹だな。練り歯磨きも捨てがたいが。耳は餃子。定番。鼻は金属バット。ツノも足そう。鉛筆2本。んー4Hで。醤油顔w あとは目……これは決まりだな。螺旋。+の。これで…

Mon, Oct 19

22:02 私の神様はどこにいるのでしょう? 瓦礫の中にうずくまったまま、カメラのレンズをじっと見据え、埃まみれの少女はつぶやく。二日後、同じ姿勢のまま目だけ閉じて、少女は天に召される……。大都会の隅の、とある写真展で見かけた一枚の写真は、ぼくの中…

Sun, Oct 18

22:00 給水塔が月に帰りたいと天井を打ち鳴らして泣く。たまらないので螺旋回しで螺旋を全部外してやる。さあお前は自由だ、月でもどこでも行けばいい。それでも泣き止まないのは押してくれないと飛べないからだという。よしきたと一押しするとそのままどす…