2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

Sat, Oct 31

19:00 その山羊は一時間に一回めぇと鳴くので村人は時報代わりに使う。山羊が眠っている間は人々も眠る。目を覚ましてめぇと鳴くまで村の一日は始まらない。昼だろうと夜だろうと鳴き声を聞くまで寝ているし、声が聞こえなくなるまで起きている。めぇめぇと…

Fri, Oct 30

21:09 臍のゴマと耳垢と目ヤニと鼻糞と爪垢は互いに反目しあっていた。黒いからどうだ黄色いからどうだとその色や容貌を罵りあっていた、しかし彼らの増殖とともに宿主は徐々に弱り始め、絶滅の可能性もあるため、宿主保存の策を練るべく、今ようやく会議の…

Thu, Oct 29

20:00 彼の放った矢が、2.44m先の的めがけて落ちてゆく。初速5m/sで描かれる緩やかな放物線。私が今、どのように祈ろうともこの放物線は狂うはずもなく、彼が満足げにビールを飲むしぐさまで、すでに誰かに決められていたかのようだ。私が今夜、彼の腕で眠り…

Wed, Oct 28

21:00 龍はその死を目前に、一人の男に命じ少女の背に自分の姿を彫らせた。見た者はみなそれを欲し、男は不眠不休で彫り続けた。やがてその国の民は全て背に龍を持つに至り、持たないのは男一人となった。男は絶命寸前の龍の前で跪き、その鱗に自分の姿を彫…

Tue, Oct 27

20:53 あなたの鼻の穴を綿球で塞ぐ。耳の穴を綿棒で塞ぐ。肛門は麺棒で塞ぐ。尿道は爪楊枝で塞ぐ。涙腺はマチ針で塞ぐ。そして最後にその口をあたしの唇で塞ぐ。あたしの吐息が漏れないように、あなたの中から外へ通じる穴という穴を塞ぐ。毛穴も汗腺も塞ぎ…

Mon, Oct 26

23:29 君はぼくのブロックノイズの中にいて、ぼくは君のブロックノイズの中にいる。ノイズから不要なものが取り除かれ君の姿を作り出す。こうしてぼくは一日に一度、君に逢える。周りを取り囲む無数のワームたちが、不要なノイズを食い尽くし、時間がきたら…

Sun, Oct 25

23:00 ゴミ出しのときにいつも会う奥さんの代わりにご主人が見えたのでどうかしたのかと尋ねると、ええちょっと体調が、という。それはお大事にと返す代わりに、透けないビニル袋持って来ましょうかと言うと、ご主人にへらと薄笑い。手に提げたビニル袋に透…

Sat, Oct 24

19:00 このプールに飛び込む度、何かをひとつだけ持っていかれる。最初はキャップ、次はゴーグル、やがて水着に手をかけられ、鼻に指を突っ込まれ、髪の毛を引きずられ、眼球をえぐられそうになる。それでも私は飛び込み続ける。この痛みこそが、彼の、永遠…

Fri, Oct 23

17:00 ずっと絵ばかり描いておりました。描いたのはもうひとつのセカイでした。そこに描いた婦人に恋をして、いつかあちらに行きたいと願いました。願い叶って来てみると、私が描いた、そのままの光景にただ驚くばかり。婦人への思いも無事相通じた今、再び…

Thu, Oct 22

22:57 机の上のキャップに違う色のペンを差す。すると恍惚の表情をするので、ペン立ての中のペンの上と下を入れ替えてみる。反目するもの、吐き気を催すもの、恥ずかしがるもの、いきなり交わるもの、反応は様々である。ノック式だけは、その様子を見ながら…

Wed, Oct 21

21:00 アバターを設定しろというのでまず輪郭を選ぶ。レスポールを。次は髪の毛。蚯蚓千匹だな。練り歯磨きも捨てがたいが。耳は餃子。定番。鼻は金属バット。ツノも足そう。鉛筆2本。んー4Hで。醤油顔w あとは目……これは決まりだな。螺旋。+の。これで…

Mon, Oct 19

22:02 私の神様はどこにいるのでしょう? 瓦礫の中にうずくまったまま、カメラのレンズをじっと見据え、埃まみれの少女はつぶやく。二日後、同じ姿勢のまま目だけ閉じて、少女は天に召される……。大都会の隅の、とある写真展で見かけた一枚の写真は、ぼくの中…

Sun, Oct 18

22:00 給水塔が月に帰りたいと天井を打ち鳴らして泣く。たまらないので螺旋回しで螺旋を全部外してやる。さあお前は自由だ、月でもどこでも行けばいい。それでも泣き止まないのは押してくれないと飛べないからだという。よしきたと一押しするとそのままどす…

Sat, Oct 17

23:16 一緒になって二十年経っても、いや三十年経っても、「愛してる」と囁いてくれる口が欲しいから、君が寝ている間にその舌をぐいと引っ張り出して、ナイフで二枚に裂こうとする。そうしてまでもその言葉が欲しいのだとぼくが願っていることを、その寝顔…

Fri, Oct 16

23:01 月の晩も、月のない晩も、彼らは常に戦い続けた。たった一本の円匙を振るって地面に穴を掘り、碁盤の目に入り組んだ町並みを縫っては、敵を待ち伏せ誘き寄せる。やられてもやられても、私への忠誠を忘れずに戦ってくれた彼ら、検非違使たちに思いを馳…

Thu, Oct 15

22:00 親不知たちは親の顔を知らず、親不知の親は、あまりにたくさんの親不知を産むので、もはや子の顔の区別がつかなくなってしまった。いつか、たった一個でもいいから、抜かれた親不知が自分を探し出してくれやしないかと願いながら、今日も親不知の親は…

Wed, Oct 14

22:01 生後すぐの赤子は、眼球、特に角膜の辺りが好物だが、なにぶん高価なのでそう簡単に与えることはできない。生後半年までの赤子の前でうっかりベロベロバーなどしようものなら、はずみで落ちてしまった眼球を喰われてしまう場合もあるので、ベロベロバ…