Fri, Mar 19

  • 21:01  ただ、腕を切り落としたり舌を引きちぎったりするだけでグロテスクとは言わない。ほら、今切り落としたばかりの私の左腕をごらん。これのどこがグロテスクなのだろう。真にグロテスクというのは……そう、今、貴女がその左腕に頬ずりをしているような、そういう行為を指すのだよ。 #twnovel
  • 00:13  婆が指し示す先には屍がうず高く積まれ、子供らは新しい屍を引きずりながら私の前を過ぎる。屍は全て太腿と脇腹を抉られている。それを見届けると、婆は自分の乳房を出し両手で絞り上げる。出てくるのは血の乳。子供らがそれに群がる。ふと、脇腹と太腿に痛みを覚え、私は我に返る。 #twnovel

Powered by twtr2src

Thu, Feb 11

  • 22:32  文字が散亂してゐる。夕べ讀みかけたまゝの本から逃げ出したのだ。誤つて踏まぬやうベッドを降り、いくつか拾ひ上げると偏も作りも濁點もばらばらで死んでゐる。まだ息のある文字は自分の居所を探してのそのそ這ひ囘つてゐる。私は死んだ文字を集めて少しづゝ?燭で炙つてゐる。夕暮れが近づいてゐる。

Powered by twtr2src

Sun, Jan 31

  • 22:57  爆発とは、あるウィルスが特定の環境下で瞬間的に無数に増殖する現象を指す。特定の環境とは具体的には体内を意味し、人がそのウィルスに感染すると、それに気づかぬほど瞬時にぽんと破裂してしまう。今やウィルスへの感染〜破裂は日常的となり、ラッシュ時には電車一両ごとぽんと破裂するこ……ぽん。

Powered by twtr2src

Thu, Jan 21

  • 23:25  貴女の舌が私の首筋から胸へ、さらにその先へと這ってゆくとともに、私の血液はその循環速度を速め、血管の皮膜の薄い部分に猛烈な圧力を加え始める。やがて圧力に耐えきれなくなった血管は破れ、舌の快楽に溺れていた私の脳は、薄れゆく意識の中でようやく気づく。これは巧妙な殺人であったと。

Powered by twtr2src

Wed, Jan 13

  • 20:36  上框に腰を降ろし肩に乗った雪を払う。台所から水飴の壺を取り暖炉の前に座る。傍の端末の電源を入れ、今日拾ったコトバを放り込んでは検索を繰り返す。冬の終わりを見つけるために。眠り続ける連れ合いを起こすために。しかしそれは見つからないまま、連れ合いは眠り続け、水飴が底をつくことはない。

Powered by twtr2src

Thu, Dec 31

  • 23:55  屏風の虎は十二年に一度、それも最初の三分間だけ外に出ることが許されます。世界に挨拶をする三分間です。後ろでは、一休さんがいつでも出られるよう縄を持ってスタンバってます。さて、そろそろあなたにも聞こえてくるはずですよ。「おめでとうおめでとう、さようならさようなら」 #twnovel

Powered by twtr2src

Sun, Dec 27

  • 23:29  痛みがやがて快楽をもたらすように、痒みはやがて郷愁をもたらす。今、私の脳を侵すのは右腕の痒み。眼前にはあの夏の風景。かつて恋した少女がゆっくり手招きする。堪えきれず右腕を掻くと少女は消え、赤い掻跡だけを残す。薄く血の滲む腕を二三度さすった後、私は左腕を差し出す。 #twnovel

Powered by twtr2src